Stay hungry, stay foolish

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Apple Pay の混乱は収束したのだろうか?

   

オートチャージの話に続き、Apple Pay の話です。昨日こんな記事が流れていました。

アップルがほくそ笑むApplePayの最新状況??今後日本に起こる3つの変化

これ、タイトルだけ見るとApplePayが絶好調のように見えますが、内容を読んでみた感想としては「微妙」な感じで、タイトルほどのポジティブな評価はできないなあ、と思いました。この記事のベースとなっているのは、5月2日に行われたAppleの決算発表中のTim Cookのこの発言です。

In Japan, where Apple Pay launched last October, more than 0.5 million transit users are completing 20 million Apple Pay transactions per month.(Apple Payが昨年10月に開始された日本では、50万以上の交通利用者が月間2000万回のApple Payによる処理を行っている)

記事にもあるように『重要なのは、この数字が「多いのか少ないのか」「改札処理以外の物販も含むのか」という点だ。』ということですよね。この記事では、様々なデータを元に根拠を示して「(サービス開始半年としては)悪くない水準」と結論づけています。「悪くない」なら同意ですが、「ほくそ笑む」とまでは思えないなあ、というのが私の感想です。

昨年 iPhone7 (とApple watch 2) が発表されたとき、SUICA に対応したことが大々的に報じられました。私も、iPhone で交通 IC カードが使えるようになることを願っていましたし、Apple がそれまでの「全世界統一スペック」という原則を曲げてまで日本独自仕様に対応したことには驚きました。しかし、発売直後の大混乱で、日本の電子マネーの仕組みが想像以上に複雑だったことがわかりました。上の記事中にもこんなことが書いてあります。

あまり知られていない事実として、実は日本版Apple Payはさまざまな経緯から海外版Apple Payとは互換性がないサービスになっているのだ。

この「さまざまな経緯」の全貌がなかなかわからないのですが、少なくとも誰かが音頭をとって利用者のために考えているわけでは無さそうですねえ。事業者の都合ばかりが先行し、利用者が置き去りにされているようにしか思えません。今回 SUICA が使えるようになりましたが、私鉄や地下鉄単独の定期券は買えない (JRとの連絡なら可能) のです。これでは私鉄・地下鉄のみを利用する人は使いようがありません。恐らく、まずは利用者の多いSUICAを、ということだったのでしょうが、そんなものとっとと統合しておけよ、というのが利用者としての感想ではないでしょうか。(そういえば、PASMOやSUICAと地方の交通系カードがやっと連携したのは、ほんの数年前でしたね) 他にも前回も書いたように、オートチャージのための決済には限られたクレジットカードしか使えないなど、ここでも事業者目線での制限があります。

さらに問題を複雑にしているのが、「普通のSUICAとApple PayでのSUICAは、条件やできることが違う」ということです。対応するクレジットカードについても、直前(どころか、始まってしばらくの間)まで情報が錯綜していましたし、SUICAを移行できないなどのトラブルも多かったようです。JR の Apple Pay サイトには「よくあるご質問」専用ページがありますが、その充実ぶりがかえって混乱の大きさを物語っているように思えます。「Suicaが消えた・使えなくなった」とか、「カードが追加できません」とか、項目が怖すぎます。。新しいサービスが始まる場合には少し様子を見たほうが良い、というのが常識ですが、誰もが使っているSUICAに関連するサービスだったため「よくわかっていない人」も大量に参戦した結果、問題が拡大したように思えます。

オートチャージを使わなければクレジットカードの問題は無いのですが、では、Apple PayのSUICAに普通に現金でチャージできるのかどうかといえば、別問題のようです。どこに落とし穴があるのかわかりません ^^;

NFCの方式の違いというハードウェア的な互換性の問題は、今回日本向けモデルを投入することで解決できましたが、日本固有の問題も含め、サービスの複雑さはなかなか乗り越えられていない、というのが今の感想です。これはAppleだけの問題ではありませんが、少なくともガラケーやAndroid端末ではできているのですから、次期iPhoneでは是非とも頑張って欲しいところです。

 

 

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